化学品を取り扱う企業にとって、SDS(安全データシート)は重要な情報源です。
SDSには、化学品の危険有害性だけでなく、取扱い方法、保管方法、応急措置、廃棄方法、適用法令など、化学品を安全に取り扱うためのさまざまな情報が記載されています。
SDSは、JIS Z 7253に基づき、基本的に以下の16項目で構成されています。2025年にはJIS Z 7253も改正されているため、SDSを作成・改訂する際には最新の規格や法令を確認することが重要です。
この記事では、SDSの16項目について、それぞれ「何が書かれているのか」「何のために必要なのか」をできるだけ簡単に解説します。
SDSの16項目一覧
まず、SDSの16項目を一覧で確認してみましょう。
| 項目 | 項目名 | 簡単にいうと |
|---|---|---|
| 1 | 化学品及び会社情報 | この製品は何か、誰が提供しているか |
| 2 | 危険有害性の要約 | どんな危険・有害性があるか |
| 3 | 組成及び成分情報 | 何という成分が含まれているか |
| 4 | 応急措置 | 事故やばく露が起きたときどうするか |
| 5 | 火災時の措置 | 火災が起きたときどうするか |
| 6 | 漏出時の措置 | 漏れ・こぼれが起きたときどうするか |
| 7 | 取扱い及び保管上の注意 | どのように取り扱い、保管するか |
| 8 | ばく露防止及び保護措置 | 作業者を守るために何をするか |
| 9 | 物理的及び化学的性質 | 色、臭い、沸点、引火点など |
| 10 | 安定性及び反応性 | どんな条件で危険な反応が起きるか |
| 11 | 有害性情報 | 人体にどのような有害性があるか |
| 12 | 環境影響情報 | 環境にどのような影響があるか |
| 13 | 廃棄上の注意 | 廃棄するときに何に注意するか |
| 14 | 輸送上の注意 | 輸送するときの規制や注意点 |
| 15 | 適用法令 | どのような法令・規制が関係するか |
| 16 | その他の情報 | 参考文献や補足情報など |
この16項目は、厚生労働省や経済産業省の資料でもSDSの標準的な構成として示されています。
1.化学品及び会社情報
「この製品は何なのか?」を示す項目です。
ここでは、主に以下のような情報を記載します。
- 製品名
- 化学品の推奨用途
- 使用上の制限
- 供給者の会社名
- 住所
- 電話番号
- 緊急連絡先
例えば、製品名が「○○クリーナー」であれば、その製品がどのような用途で使用されるものなのか、また、SDSを作成・提供している会社はどこなのかを確認できます。
SDSの基本情報となる項目です。
2.危険有害性の要約
「この化学品にはどんな危険性・有害性があるのか?」をまとめた項目です。
SDSの中でも特に重要な項目の一つです。
GHS分類に基づいて、
- 急性毒性
- 皮膚腐食性・刺激性
- 眼に対する重篤な損傷・眼刺激性
- 発がん性
- 生殖毒性
- 水生環境有害性
- 可燃性
などの危険有害性について記載します。
また、GHS絵表示、注意喚起語、危険有害性情報(Hコード)、注意書き(Pコード)なども、この項目に記載されます。
「この化学品は何が危険なのか」を最初に確認するための項目です。
3.組成及び成分情報
「この製品には何が入っているのか?」を示す項目です。
化学品や混合物に含まれる成分について、
- 化学物質の名称
- CAS番号
- 含有量・濃度
- 官報公示整理番号
などの情報を記載します。
特に混合物の場合は、どの成分がどの程度含まれているのかを確認する重要な情報になります。
なお、法令上の対象物質については、含有量の記載に関するルールがあります。営業秘密に関する取り扱いにも一定のルールがあります。
4.応急措置
「人が化学品にばく露した場合、どうすればよいか?」を示す項目です。
例えば、
- 吸入した場合
- 皮膚に付着した場合
- 眼に入った場合
- 飲み込んだ場合
など、それぞれについて必要な応急措置を記載します。
「新鮮な空気の場所に移す」「皮膚を流水で洗う」など、事故発生時に必要となる情報が記載されます。
事故が起きた直後に確認する重要な項目です。
5.火災時の措置
「火災が発生した場合、どう消火するか?」を示す項目です。
主に、
- 適切な消火剤
- 使ってはいけない消火剤
- 火災時に発生する可能性のある有害ガス
- 消火を行う人が使用すべき保護具
- 消火方法
などについて記載します。
化学品によって適切な消火方法が異なるため、火災時にはSDSの確認が重要になります。
6.漏出時の措置
「化学品が漏れたり、こぼれたりした場合、どう対応するか?」を示す項目です。
例えば、
- 人体へのばく露を防ぐ方法
- 適切な保護具
- 環境への放出を防ぐ方法
- 回収方法
- 清掃方法
などを記載します。
化学品の漏洩事故が発生した際に、被害を広げないための対応方法を確認する項目です。
7.取扱い及び保管上の注意
「普段どのように扱い、どのように保管するか?」を示す項目です。
例えば、
- 換気の良い場所で使用する
- 火気から遠ざける
- 容器を密閉する
- 直射日光を避ける
- 特定の物質と混ぜない
- 適切な保管温度を守る
などの情報が記載されます。
日常的に化学品を取り扱う作業者にとって、非常に重要な項目です。
8.ばく露防止及び保護措置
「作業者が化学品にばく露しないためには、どうすればよいか?」を示す項目です。
例えば、
- 管理濃度
- 許容濃度
- 濃度基準値
- 適切な換気
- 呼吸用保護具
- 保護手袋
- 保護眼鏡
- 保護衣
などについて記載します。
化学品を実際に使用する作業場では、リスクアセスメントにも活用される重要な情報です。
9.物理的及び化学的性質
「この化学品はどのような性質を持っているのか?」を示す項目です。
代表的な情報として、
- 物理状態
- 色
- 臭い
- 融点・凝固点
- 沸点
- 可燃性
- 引火点
- 自然発火点
- pH
- 溶解度
- 蒸気圧
- 密度
などがあります。
例えば「引火点が低い」「水に溶けやすい」といった情報から、火災や漏洩などのリスクを考えることができます。
10.安定性及び反応性
「どんな条件で危険な反応が起こるのか?」を示す項目です。
例えば、
- 避けるべき条件
- 混触危険物質
- 危険有害な分解生成物
などを記載します。
「高温を避ける」「強酸化剤との接触を避ける」など、化学品を安全に取り扱うための注意点を確認できます。
11.有害性情報
「人体に対して、どのような有害性があるのか?」を詳しく示す項目です。
例えば、
- 急性毒性
- 皮膚腐食性・刺激性
- 眼に対する重篤な損傷・眼刺激性
- 呼吸器感作性・皮膚感作性
- 生殖細胞変異原性
- 発がん性
- 生殖毒性
- 特定標的臓器毒性
- 誤えん有害性
などについて記載します。
項目2が「危険有害性の概要」であるのに対して、項目11では人体への有害性について、より詳しい情報を確認することができます。
12.環境影響情報
「環境にどのような影響を与える可能性があるか?」を示す項目です。
例えば、
- 水生環境有害性
- 生態毒性
- 残留性・分解性
- 生体蓄積性
- 土壌中の移動性
などの情報が記載されます。
化学品を使用・廃棄する際に、環境への影響を考えるための情報です。
13.廃棄上の注意
「使用後の化学品や容器を、どのように廃棄するか?」を示す項目です。
主に、
- 残余廃棄物の廃棄方法
- 汚染容器・包装の処理方法
- 適用される法規制
などについて記載します。
化学品だからといって、すべて同じ方法で廃棄できるわけではありません。
廃棄物処理を行う際には、SDSだけでなく、実際に適用される法令や自治体等のルールも確認することが重要です。
14.輸送上の注意
「化学品を運ぶとき、どのような規制があるか?」を示す項目です。
例えば、
- 国連番号(UN No.)
- 国連分類
- 容器等級
- 海洋汚染物質
- 陸上輸送
- 海上輸送
- 航空輸送
などの情報が記載されます。
特に危険物や有害物質を輸送する場合には、重要な確認項目です。
15.適用法令
「この化学品には、どのような法律・規制が関係するのか?」を示す項目です。
例えば、
- 労働安全衛生法
- 化学物質排出把握管理促進法(化管法・PRTR)
- 毒物及び劇物取締法
- 消防法
- 化審法
- その他関係法令
などについて記載します。
SDS作成では、最新の法令情報を確認することが非常に重要な項目です。
特に法令改正によって対象物質や規制内容が変わることがあるため、SDSは作成したら終わりではなく、必要に応じて改訂する必要があります。厚生労働省もSDSの法令情報について最新情報を確認するよう案内しています。
16.その他の情報
「ここまでの項目に入らない、参考となる情報」を記載します。
例えば、
- 参考文献
- SDS作成時に使用した情報源
- 改訂履歴
- その他の補足情報
などを記載します。
SDSの内容を確認する際に、「この情報はどこから得られたのか?」を確認するためにも重要な項目です。
SDSの16項目は、それぞれ役割が違います
SDSの16項目は、単に決められた項目を埋めていくだけのものではありません。
大きく分けると、次のように考えると分かりやすくなります。
①「この化学品は何?」を知る
1~3
- 化学品及び会社情報
- 危険有害性の要約
- 組成及び成分情報
↓
②「事故が起きたらどうする?」を知る
4~6
- 応急措置
- 火災時の措置
- 漏出時の措置
↓
③「普段どう安全に扱う?」を知る
7~10
- 取扱い及び保管上の注意
- ばく露防止及び保護措置
- 物理的及び化学的性質
- 安定性及び反応性
↓
④「人体や環境への影響は?」を知る
11~12
- 有害性情報
- 環境影響情報
↓
⑤「廃棄・輸送・法令は?」を知る
13~15
- 廃棄上の注意
- 輸送上の注意
- 適用法令
↓
⑥「その他の参考情報」
16.その他の情報
このように整理すると、16項目の意味が理解しやすくなります。
SDSは「作成して終わり」ではありません
SDSでは、化学品そのものの情報だけでなく、GHS分類、法令、管理濃度・濃度基準値、輸送規制など、更新される可能性のある情報も扱います。
そのため、法令改正や新しい有害性情報などを確認し、必要に応じてSDSを改訂することが重要です。
また、2025年にはJIS Z 7252・JIS Z 7253が改正され、GHS分類やSDSの記載内容についても変更が行われています。
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SDSの作成には、製品の組成情報だけでなく、GHS分類、物性・有害性情報、法令、輸送規制など、さまざまな情報を確認する必要があります。
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この記事のポイント
SDSの16項目は、簡単にまとめると、
「化学品にはどんな危険があるのか」
「事故が起きたらどうするのか」
「普段どう取り扱うのか」
「人体や環境への影響は何か」
「廃棄・輸送・法令上の注意は何か」
を体系的に伝えるためのものです。
SDSを正しく理解することは、化学品を安全に取り扱うための第一歩です。
※本記事はSDSの基本的な構成を分かりやすく解説することを目的としたものです。実際のSDS作成・改訂では、対象となる化学品、適用法令、最新のJIS、GHS分類基準等を確認する必要があります。
出典: 厚生労働省、経済産業省等の公開資料を参考に作成。



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